若年層へのアプローチに苦戦していた日本生命保険相互会社。若年層に認知してもらうために様々なデジタル施策を試みていた同社ですが、従来のデジタル施策では一方通行の情報発信が中心で、お客様と双方向のコミュニケーションができていないことに課題を感じていました。そのような課題を解決する手段として導入したのが、デジタル上で双方向の対話コミュニケーションを可能にするキャラクタープラットフォームです。
今回、日本生命保険相互会社がキャラクタープラットフォームをどのように活用し、顧客との継続的なつながりを生み出したのか、導入の背景や具体的な施策・そして得られた成果について、日本生命保険相互会社営業企画部の担当部長 大内田 鹿郎様にお話を伺いました。
大内田様: 生命保険は、他の消費財と異なって顧客が自発的に購入するのではなく、将来いつ起きるか分からない不安に対して購入するため、若年層に対して必要性を理解していただくのが、なかなか難しいという課題がありました。
以前は、営業職員が職域(企業や団体などの従業員が働く現場)で直接若年層と接触して保険の必要性を説明したり、または若年層の方々と同じ職場の先輩社員が対して「保険に入っておいた方がいいよ」と勧める文化がありました。しかし、近年はそうした機会が減少し、保険への理解が進みにくくなっています。
大内田様: これまで営業企画部では、SNSやデジタル広告を活用して保険の情報を発信してきました。また、結婚式場などの異業種の企業と連携し、ライフイベントをきっかけに保険の必要性を伝える試みも行っています。
しかし、どの施策も基本的には一方通行の情報発信になってしまい、お客様と双方向のコミュニケーションができない点が課題でした。お客様が持つ潜在的な不安や疑問に寄り添い、保険の必要性をより深く理解してもらうことが難しかったのです。その結果、販売件数の拡大にはつながりにくい状況が続いていました。
大内田様: 最初にキャラクタープラットフォームを拝見して感じたのは、キャラクターの可愛らしさと親しみやすさでした。また、キャラクタープラットフォームでは、双方向で会話を進めながら少しずつ情報を共有できる体験が得られるのが新鮮でした。この点は、我々が課題と感じていたデジタル上の一方通行の情報収集とは異なる体験を提供できると考えました。
生命保険は自発的に購入されることが少なく、需要を喚起する仕組みが求められます。キャラクタープラットフォームなら、お客様に対して、会話を通じて少しずつ生命保険の必要性を理解していただけるのではないかと考えました。
大内田様: 一つ目は、Capexさんが生命保険営業の特殊性を非常によく理解してくださっていたことです。保険は日用品のような消費財と比べると、売り方や提案方法が異なります。特に、お客様の将来の不安を汲み取りながら提案する必要があるのですが、Capexさんはその点を的確に捉えた提案をしてくれました。
また、「できること・できないこと」を明確に伝える姿勢にも信頼感を抱きました。セキュリティ面でも、AIの誤回答(ハルシネーション)対策として、例えば、NGワードの制御や個人情報のチェック機能・体制が整っており、安心して導入を進めることができました。
大内田様: 「みらい」という名前は、当社の商品「みらいのカタチ」に由来しています。また、生命保険のデジタルマーケティングが今後さらに発展するように、「未来に花開いてほしい」という願いも込めています。
キャラクターのデザインは、入社3年目の女性社員が中心に行い、若年層だけではなく幅広い年代に受け入れられるように設計をしました。ただ、ペルソナを厳密に設計することはしていません。お客様にみらいちゃんとの会話体験を楽しんでもらいながら、生命保険の必要性を感じてもらうシナリオの設計はCapexさんに相談しながら決めさせていただきました。
大内田様: 生命保険の営業では、いかに自然な流れで「保険の必要性」に気づいてもらうかが重要です。そのため、みらいちゃんとの会話の流れの中でも無理なく保険の話題に入れるよう工夫しました。
例えば、お客様と趣味の話をしている際に、「スポーツが好き」という回答をいただいたら、「スポーツをしているとケガのリスクがありますよね」といった形で話を進めます。このように押しつけがましくなく、会話の延長で自然に保険の必要性を感じてもらえるシナリオ設計を重視しました。
大内田様: 今までは一方通行の情報発信でしたが、キャラクタープラットフォームを導入したことで、会話を通じて少しずつ保険の理解を深めてもらえるようになったと感じています。その結果として一番分かりやすい成果はアポイントの取得率です。キャラクターとの会話をきっかけに、アポイントの取得率が一定程度向上しました。
また、意外だったのは40〜50代のお客様の利用が想定以上に多かったことです。キャラクタープラットフォームは主に若年層が利用することを想定して導入しましたが、むしろ中高年層の方が長く使ってくれたという結果が出ています。中高年層の方々にとって、キャラクターとの会話が気軽に情報を得られる手段になっていると感じました。
大内田様: 1回目のPoCは営業職員を通じて、職域で疎遠になっている既存のお客様にLINEやメールでキャラクタープラットフォームを案内する形で実施しました。お伝えする範囲を限定した理由として、初めての利用なこともあり、お客様からマイナスの反響がないかをチェックするのが目的です。結果としては危惧していたクレームはなく、ポジティブな意見が多い結果になりました。そして、2回目のPoCでは告知をせず、オフィシャルホームページの商品ページにみらいちゃんを設置し、訪問者が利用できる形にしています。
大内田様:キャラクタープラットフォームに期待しているのは、双方向のコミュニケーションにより、保険の必要性を知ってもらうことなので、第1回目のPoCよりも保険のニーズ喚起を意識してシナリオを変更しました。しかし、突然保険の話しをしてしまうとお客様の体験が悪くなってしまうので、そこに辿り着くまでの設計も重要視して設計をしています。
これらのシナリオ変更は、キャラクタープラットフォームでお客様がどこで離脱されたのかをデータとして見える化できているからです。我々としては保険を売りたいという思いはありますが、お客様との日常会話の重要性が第1回目のPoCで分かったので、そこのバランスを意識して修正を行うことができました。
大内田様:キャラクタープラットフォームをご利用いただいたお客様にアンケートをお答えいただいているのですが、「保険についてもっと知りたい」という回答が予想以上に多かったことに驚きました。通常、営業職員が説明すると「売り込まれるのでは?」と警戒される方もいらっしゃいますが、キャラクターとの会話ならそのような心理的ハードルが低くなり、気軽に質問できる環境が整っていると感じています。
大内田様: 現状ではホームページに設置している段階ですが、より多くのお客様に利用してもらう方法を模索しています。営業職員も活用して連携を深めるのか、それともWeb上での活用を広げるのかはまだ試行錯誤中です。
将来的には、キャラクターとの対話ログを活用し、リアルな営業活動とも連携させたいと考えています。例えば、資料請求をしたお客様がキャラクターと年金の話をしていたなら、インサイドセールスがその情報を参考にしながら対応できるようにする。そうすれば、より精度の高い提案が可能になると考えています。
大内田様: 保険業界はもちろんですが、自然な会話を通じてお客様との距離感を近づけたり、情報提供や需要喚起を行いたいと考えている企業に特に向いていると思います。例えば、一方通行の情報発信では効果が出にくいと悩む企業には、顧客との関係性を築く手段として有効です。キャラクターを活用することで、お客様との関係性を築きながら、自然な形で商品やサービスの価値を伝えられる。こうしたアプローチにはまだまだ可能性があると思います。
インタビュイープロフィール 株式会社セブン銀行 部署:バンキング統括部 役職:グループ長 氏名:高田 大輔 様 株式会社セブン銀行 部署:バンキング統括部 役職:調査役 氏名:勝山 浩輔 様
株式会社セブン銀行バンキング統括部グループ長
高田 大輔 様
株式会社セブン銀行バンキング統括部調査役
勝山 浩輔 様
カードローン事業におけるマーケティング課題を抱えていたセブン銀行。Web広告やランディングページを通じて多くの見込み顧客を集めることには成功していたものの、そこから申し込みに至るまでのコンバージョン率に課題がありました。この「あと一歩」を後押しするために、同社が導入したのがLINEを活用したPickUpです。
今回、PickUpをどのように活用して課題を解決し、顧客との継続的なつながりを生み出したのか、具体的なエピソードを交えて詳細を伺いました。セブン銀行バンキング統括部のグループ長 高田 大輔様と、同じくバンキング統括部 調査役の勝山 浩輔様にお話を伺いました。
高田様:セブン銀行では、カードローンのサービスを提供しています。従来の取り組みはカードローンを必要とする方には興味を持っていただけるのですが、Web広告やLPを通じて集客しても、そこからお申し込みに至るまでのコンバージョン率が課題でした。そこで、この「あと一歩」を後押しする仕組みが必要だと考えていました。
一般的なWebマーケティング施策、例えばLPの最適化やキーワード変更、キャッチコピーの見直しなどは行っていました。しかし、それだけでは補えない部分がありました。
高田様:当初はカードローンのような商材に本当に適応できるのか、不安な部分が多かったですね。カードローンは、必要な方には便利な商品ですが、需要が強くないお客様にとっては逆にネガティブに受け取られる可能性もあるんです。そうした商品の特性上、繰り返しアプローチすることが逆効果になるのではないか、という懸念がありました。
また、Web広告やLPからLINEへの導線を作ったとしても、お客様がそこまで移動してくれるのか、お客様を追いかけるような行為がお客様の体験を阻害することにならないのかという疑問もありました。さらに言うと、LINEでのやり取りがどれだけお客様の背中を押せるのか、半信半疑だったのが当時の正直な気持ちです。
ですが、チーム内で議論を重ねていくうちにお客さまの申込体験を損ねず、むしろ向上させることができるのではと感じるようになりました。
勝山様:今はクッキーレス時代で、お客様との接点を継続的に持つこと自体が非常に難しい状態です。そういう背景もあり、LINEという普段使い慣れたツールを活用して、双方向のコミュニケーションを図れるという点に可能性を感じていました。これは新たな集客チャネルとして、またお客さまにとっても弊社のカードローンに対する不安を払しょくし納得してお申し込み頂けるようになるんじゃないかと考えたんです。
勝山様:比較的早かったですね。話をいただいてから3~4ヶ月程度で導入が決定しました。セブン銀行では新しい取り組みを進める際、通常もう少し時間がかかることも多いのですが、今回はかなりスムーズに進んだんじゃないかと思います。
高田様:類似サービスが他にいくつかありましたので比較検討はしました。そして最終的にはPickUpと別のサービスの2つを検討することになりました。
高田様:やはりコストパフォーマンスが非常に高かった点が決め手の一つでした。他社とも比較検討したんですけど、成果報酬型でリスクを抑えられる点や、CPAが通常のWeb広告の70%で設定できた点は非常に魅力的でしたね。他社も検討しましたが、PickUpの方が、私たちにとって導入のリスクが少ない点が非常に大きかったと思います。
勝山様:PickUp導入当初、初回シナリオの完了率は約70%でした。我々は70%でも想定以上の成果でしたが、Capexさんから80%から90%までは伸ばせるはずだと予測を聞いていました。そして、Capexさんがその原因を探るためにデータを分析したところ、顧客層の年代が高めであることが分かったんです。
そこから、Capexさんが選択肢の文字の小ささが視認性に影響している可能性があると仮説を立ててくれました。初期段階ではLINEデフォルトの小さな文字列で選択肢を表示していたのですが、これをボタン形式に変更して文字サイズも大きくしたところ、完了率が70%から80%台後半まで向上したんです。
高田様:LINEリッチメニューも活用しています。例えば、お客様はやはり「自分がローンの審査に通過できるのかどうか」というところを非常に心配されるんです。そこで、本申込の前にリッチメニューを活用し、お客様が何度でも審査診断を行えるようにしたんです。すると、1人当たり平均1.55回診断を行うという結果になり、不安を解消しながら最終的に申し込みをいただけるようになりました。
勝山様:他にも当初30日間で終了するシナリオだったところを、年間で配信するシナリオを追加で作成し、季節ごとの資金需要に応じたメッセージ配信を行ったのも効果的でした。年末年始には「帰省やお年玉での出費をサポートします」といったコンテンツを配信するといったようなシナリオです。これもCapexさんからのご提案だったんですが、私たちにはなかった視点だったので非常に助かりました。結果的に、登録から220日後に申し込みがあったケースもあり、長期的な接点を維持する重要性を実感しました。
勝山様:カードローンという商材は、お客様からの声がなかなか届きにくい商材です。そのため、当初はPickUpを導入したことによるお客さまからのお問い合わせ等は増えるだろうと予想していたんですが、想定していたような反応はほとんど無く、これは嬉しい誤算でした。
高田様:そうだと思います。ローンという商品は、どうしても心理的な障壁を伴うものだと思っています。「本当に必要なのか」「返済できるのか」といった不安を抱えるお客様も多いと思うんです。これまでWeb広告やLPでは捉えきれなかったこうした不安が、LINEというツールを通じた双方向のコミュニケーションによって少しずつ解消されていると感じています。結果的に、ローンという商品を「便利に使ってみよう」と思っていただけるきっかけになっているのではないでしょうか。
勝山様:Capexさんに助けられていると感じるのは、ユーザーのインサイトを弊社よりも深く理解していただいているところです。私たちの事業内容はもちろん、その先のユーザーのことも理解してくださっているので、良い提案につながっているのだと感じます。
高田様:PickUpは、お客様が心理的な障壁を感じやすい商材を扱う企業にとって非常に相性が良いと思います。例えば、金融商品はもちろんですが高額な契約が必要なサービスなどで、顧客が「ちょっと不安だな」と思うポイントを解消できるツールとして最適ではないでしょうか。お客様に寄り添いながら、信頼を築きたいと考えている企業にはおすすめのサービスかと思います。