EVENT REPORT
adtech tokyo 2025 ステージ登壇レポート

2025年10月23日、アジア最大級のマーケティングカンファレンス「adtech tokyo 2025」のステージで、株式会社Capex(以下、Capex)とネオファースト生命保険株式会社(以下、ネオファースト生命)による対談セッションが開催されました。
テーマは「デジタルマーケティングで進化する顧客体験」。生命保険という”取っ付きにくい商材”をいかにお客さまに届けるか―という、現場のリアルな挑戦に満ちたセッションでした。
「認知度がない中で、どうやって潜在層にアプローチするのか」 「複雑な保険商品を、デジタル上でどう分かりやすく伝えるのか」 「一人ひとりに最適な顧客体験を、どう設計するのか」
本セッションでは、成功事例だけでなく、 試行錯誤の途中で感じた迷いや難しさについても率直に語られました。 生命保険という商材だからこそ直面する「顧客体験設計のリアル」を、イベント当日の空気感とともにお届けします。
登壇者紹介
西山 様
ネオファースト生命保険株式会社
マーケットイノベーション部 デジタルイノベーション課 ラインマネジャー
守 様
マーケットイノベーション部 デジタルイノベーション課 アシスタントマネジャー
小亀 俊太郎
株式会社Capex 代表取締役
池田公輔
株式会社Capex 事業開発部
イントロダクション
出会いのきっかけ
両社のパートナーシップは、Capexのサービスを既に導入していた同業種の企業からの紹介により始まりました。ネオファースト生命が2023年4月に新設した「マーケットイノベーション部デジタルイノベーション課」において、新たな収益の柱を共に作っていくためのダイレクトマーケティングのパートナーを探していたタイミングでの出会いでした。
「ダイレクトマーケティング自体が(2023年)4月に立ち上がって、実際開始したのが8月からでした。まだ”よちよち歩き”の頃にCapexさんとお会いしました。会社としては大きな販売計画を立てており、飛躍的な成長を求められている中で、幅広く潜在層・準潜在層に対してもアプローチできるパートナーを探していました。」
― ネオファースト生命 西山様
ネオファースト生命が直面していた課題
セッションではまず、ネオファースト生命が抱えていた複合的な課題について、マネジメント層である西山様と、現場担当者である守様、それぞれの視点から共有されました。
マネジメント視点での課題:認知と理解の壁
西山様からは、後発企業としての市場ポジションと、商材特有の難しさについて言及がありました。
- 認知度の不足: 後発企業であるため知名度が低く、指名検索等で手堅く獲得できる層には限界があり、早晩アプローチできるボリュームが枯渇してくることが予見されていた。
- 低いコンバージョン率(CVR): 初めて会社を知る層がいきなり保険申し込みに至ることは稀であり、集客してもCVRが業界平均と比較しても低い状況が続いていた。
- 商材の難解さ: 生命保険は「分かりにくい」「取っ付きにくい」「できれば考えたくない」商品であり、デジタル空間でいかに理解を促すかが大きな障壁となっていた。
現場視点での課題:離脱後の接点欠如
現場でCRMを担当する守様からは、Web広告における離脱ユーザーへのアプローチに関する課題が挙げられました。
「どうしてもランディングページ(LP)に来訪されたり、資料請求・申し込みフォームまで来ても、そこで離脱してしまうお客さまが非常に多かったです。広告以外の手法でアプローチを拡充できないか、という点が課題でした。」
― ネオファースト生命 守様
Capexの提案とアプローチ戦略
これらの課題に対し、Capexは対話システムを活用した包括的なデジタルマーケティング戦略を提案しました。その核となるのは、「顧客の検討フェーズ(ファネル)に応じた対話設計」と「マルチチャネルでの接点構築」です。
全体戦略の3つの柱
- デュアルLINEアカウント戦略: 顧客の検討度合い(ファネル)に応じて2つのLINEアカウントを使い分け、最適なコミュニケーションを提供する。
- マルチチャネルアプローチ: LINEだけでなく、メールやSMSなどを組み合わせ、ニーズが顕在化するタイミングを逃さない網羅的な接点を構築する。
- 高速PDCA: クリエイティブやシナリオのA/Bテストを高速で繰り返し、顧客体験を磨き込む。
「認知度があまりないお客さまや、保険需要が薄いお客さまに対しても、しっかりと対話戦略を作ってアプローチすることで、資料請求や申し込みというステップを具体的に踏んでいけるような体験設計を意識しました。」
― Capex 小亀
デュアルLINE公式アカウント戦略の詳細
本プロジェクトの最大の特徴は、ターゲット層の検討深度に合わせて「リードアカウント」と「ナーチャリングアカウント」の2つのLINE公式アカウントを運用する戦略です。
① リードアカウント(顕在層・準顕在層向け)
対象・流入経路: 検索広告、ディスプレイ広告などからLPや商品ページ、見積もり画面に到達したものの、コンバージョンに至らず離脱しようとしたユーザー。
目的: 具体的な検討を促進し、申し込みや資料請求へ導く。
Capex 池田による解説では、このアカウントの役割は「直接的なアプローチ」にあります。ユーザーが抱える疑問や不安(例:自分に合ったプランが分からない、保険料が高いのではないか等)を解消し、自分ごと化を促します。
② ナーチャリングアカウント(潜在層向け)
対象・流入経路: LINE広告等から直接流入する、保険への関心がまだ薄い層。
目的: ユーザー育成(ナーチャリング)。まずは接点を持ち、中長期的に関係性を構築する。
LPを挟まずに直接LINEへ誘導するため、初回接触時のハードルを下げ、親しみやすさを重視した設計となっています。
「保険加入のモチベーションがある方とそうでない方の差はものすごく大きいです。こうやって(アカウントを)分けて考えていくというのは、非常に的を射ていると思いました。」
― ネオファースト生命 西山様
セグメント最適化の具体的手法
LINEアカウントに友だち追加された後のコミュニケーションにおいて、Capex は徹底したパーソナライズを実施しました。
初回診断による属性取得
友だち登録直後に、チャットボット形式で「年代」「家族構成」「検討している保険の種類」などをヒアリングする診断を実施。この回答結果に基づき、その後の配信シナリオを分岐させています。
パーソナライズ施策の例
- 配信コンテンツの出し分け: 年齢や性別に応じた保険料の試算結果や、家族構成に合わせた特約の提案を自動配信。
- タイミングの最適化: ユーザーの属性とネオファースト生命の強みを掛け合わせ、最も反応が得られやすいタイミングでメッセージを配信。
- リッチメニューの動的変更: 「資料請求」を重視する層、「見積もり」を重視する層など、ユーザーの興味関心に合わせてメニュー表示をリアルタイムに変更。
「それぞれの動線ごとに、どういったポップアップを出すのか、どういった配信設計をするのか。流入経路ごとにも深く掘り下げて、どんどん施策をブラッシュアップしていきました。」
― ネオファースト生命 守様
ナーチャリングアカウント独自の育成戦略
ファネルが浅い層を対象とするナーチャリングアカウントでは、単なる商品情報の押し付けにならないよう、「体験型コンテンツ」を重視した独自の設計が行われました。
6つのカテゴリーと体験型コンテンツ
長期的な関係構築のために、「初期エンゲージメント」「知識促進」など6つの主要カテゴリーを設定。特にユニークな施策として紹介されたのが「じゃんけん×リスク啓発」コンテンツです。
- ゲーミフィケーションの活用: 「じゃんけん」と「人生のリスク」を掛け合わせたゲームを提供。医療保険やがん保険がどのような場面で役立つかを、遊びながら学べる仕組みを構築。
- インセンティブ設計: クイズの正解やゲーム参加に対して、特典PDF(ガイドブック等)をプレゼントし、アカウントをブロックせず継続利用する動機付けを行う。
- 主体的情報取得の促進: リッチメニューをタブ切り替え式にし、ユーザー自身が興味のある専門情報を能動的に取得できる動線を確保。
「ユーザー育成がされていないからこそ、このLINE公式アカウントを登録する理由として、インパクトのある動線を設定しました。(中略)他社にはない動線を設定することで、ファネルの浅いユーザーに対しても継続して情報を取り続けてもらう設計にしました。」
― Capex 池田
マルチチャネル施策:LINE×Eメールの統合
LINEでの対話最適化に加え、次のステップとしてEメールマーケティングの高度化(マルチチャネル化)についても議論が及びました。
メールマーケティングの課題と刷新
ネオファースト生命ではMAツールを導入していたものの、テキストメール中心の運用で、開封率やクリック率が伸び悩んでいました。そこでCapex が、LINE施策と連動した全体設計やUXの見直しを実施しました。
- HTMLメール化: 視覚的な訴求力を高めるため、テキストメールからHTMLメールへ移行。
- チャネルの役割分担:
- LINE: 手軽な接点、初期の興味喚起、即時性の高いコミュニケーション。
- Eメール: より詳細な情報提供、長文での説得、信頼性の醸成。
「LINE上で提供している情報以上に深く知りたいお客さま向けに、Eメールでしっかり情報伝達を行うことで、需要喚起や自分ごと化を促進でき、こういったところを今後は実現していきたいです。」
― Capex 小亀
実施結果と成果
これらの施策を通じて、定量・定性両面で確かな成果が現れ始めています。
定量的・定性的な成果
- 数字の明確な変化: 細かなセグメント分けとクリエイティブの出し分けにより、停滞していたCVRなどの数値に明確な改善が見られた。
- ユーザー行動の変容: アンケート回答において、「何となく登録したが、見ていくうちに申し込みたくなり、家族の分も一緒に申し込んだ」という声が寄せられた。
- マルチチャネルの相乗効果: Eメールを見た顧客から電話で問い合わせがあり、その後「丁寧な説明をありがとう」というハガキが届くなど、デジタルを起点としたアナログな信頼関係構築にも繋がっている。
「Capexさんのクリエイティブな量とスピードは本当にすごいです。我々が求めていた細かいセグメントに対して、かなりのテストを繰り返してきています。(中略)明確に数字の変化が見えてきております。」
― ネオファースト生命 西山様
今後の展望とアクション
対談の終盤では、今後の展望として「各チャネルの磨き込み」と「テクノロジー活用による拡張」が語られました。
今後の重点アクション
- チャネルの深化: LINE、メールそれぞれの施策は走り出したばかりであり、さらなる磨き込みを行う。
- AIチャットの活用: 生成AIなどの技術を活用し、より高度で自然な対話体験の実装を検討する。
- マルチチャネルの拡張: LINE、MAツール、Webサイト等の連携を強化し、ユーザー体験をシームレスに繋ぐ。
西山様は、「お客さまのニーズを捉えて、よりユーザーフレンドリーな体験を作っていくことが最優先。地味な作業も多いが、細かい努力を通じてより多くのお客さまに保険を届けていきたい」と意気込みを語りました。
今後も、国内外問わずさまざまなイベントへの参加を通じて、Capexのソリューションが提供する価値をより多くの方へ届けていきたいと考えています
Capexでは、対話AIシステムとマーケティングの知見を融合させ、貴社の事業成長と顧客体験の向上を支援いたします