インタビュイープロフィール
日本生命保険相互会社 営業企画部担当部長
大内田 鹿郎様
課題
  • 生命保険は形がない商材のため、若年層に必要性を理解してもらいにくかった
  • 以前は保険会社の営業職員やお客様の身近な方々からの対面での勧めがあったが、そうした機会が減少し保険理解が進みにくくなっている
  • SNSやデジタル広告などを行っていたが、一方通行の情報発信になりがちで双方向のコミュニケーションが難しかった
導入の決め手
  • Capexから、生命保険の特殊性(将来の不安を汲み取る提案など)をよく理解した提案をいただけたこと
  • AIの誤回答(ハルシネーション)対策や、セキュリティ面への信頼感があった。また、「できること・できないこと」を明確に伝えてくれるため、社内への期待値の調整がしやすかった
  • お客様との双方向の会話を通じて、雑談を通じて少しずつ保険の必要性を伝えられるキャラクタープラットフォームに魅力を感じた
結果
  • キャラクターとの会話をきっかけに、アポイント取得率が向上した
  • 「保険についてもっと知りたい」という声が多く寄せられ、キャラクターとの会話が心理的ハードルを下げる手段となった
  • 若年層だけでなく、40〜50代の利用も多く、長く使ってもらえる傾向があった

 

若年層へのアプローチに苦戦していた日本生命保険相互会社。若年層に認知してもらうために様々なデジタル施策を試みていた同社ですが、従来のデジタル施策では一方通行の情報発信が中心で、お客様と双方向のコミュニケーションができていないことに課題を感じていました。そのような課題を解決する手段として導入したのが、デジタル上で双方向の対話コミュニケーションを可能にするキャラクタープラットフォームです。

今回、日本生命保険相互会社がキャラクタープラットフォームをどのように活用し、顧客との継続的なつながりを生み出したのか、導入の背景や具体的な施策・そして得られた成果について、日本生命保険相互会社営業企画部の担当部長 大内田 鹿郎様にお話を伺いました。

若年層の保険加入を阻む「ニーズ潜在型商品」という特性

── キャラクタープラットフォームを導入する以前の課題をお教えください。

大内田様: 生命保険は、他の消費財と異なって顧客が自発的に購入するのではなく、将来いつ起きるか分からない不安に対して購入するため、若年層に対して必要性を理解していただくのが、なかなか難しいという課題がありました。

以前は、営業職員が職域(企業や団体などの従業員が働く現場)で直接若年層と接触して保険の必要性を説明したり、または若年層の方々と同じ職場の先輩社員が対して「保険に入っておいた方がいいよ」と勧める文化がありました。しかし、近年はそうした機会が減少し、保険への理解が進みにくくなっています。

── そのような課題に対して、これまでどのような施策を行ってきましたか?

大内田様: これまで営業企画部では、SNSやデジタル広告を活用して保険の情報を発信してきました。また、結婚式場などの異業種の企業と連携し、ライフイベントをきっかけに保険の必要性を伝える試みも行っています。

しかし、どの施策も基本的には一方通行の情報発信になってしまい、お客様と双方向のコミュニケーションができない点が課題でした。お客様が持つ潜在的な不安や疑問に寄り添い、保険の必要性をより深く理解してもらうことが難しかったのです。その結果、販売件数の拡大にはつながりにくい状況が続いていました。

生命保険の必要性を双方コミュニケーションで理解してもらう

── 双方向のコミュニケーションに課題を抱えていらっしゃる中で、キャラクタープラットフォームの説明を初めて聞いたときの印象をお教えください。

大内田様: 最初にキャラクタープラットフォームを拝見して感じたのは、キャラクターの可愛らしさと親しみやすさでした。また、キャラクタープラットフォームでは、双方向で会話を進めながら少しずつ情報を共有できる体験が得られるのが新鮮でした。この点は、我々が課題と感じていたデジタル上の一方通行の情報収集とは異なる体験を提供できると考えました。

生命保険は自発的に購入されることが少なく、需要を喚起する仕組みが求められます。キャラクタープラットフォームなら、お客様に対して、会話を通じて少しずつ生命保険の必要性を理解していただけるのではないかと考えました。

── キャラクタープラットフォームを導入するにあたって、一番大きな決め手は何でしたか?

大内田様: 一つ目は、Capexさんが生命保険営業の特殊性を非常によく理解してくださっていたことです。保険は日用品のような消費財と比べると、売り方や提案方法が異なります。特に、お客様の将来の不安を汲み取りながら提案する必要があるのですが、Capexさんはその点を的確に捉えた提案をしてくれました。

また、「できること・できないこと」を明確に伝える姿勢にも信頼感を抱きました。セキュリティ面でも、AIの誤回答(ハルシネーション)対策として、例えば、NGワードの制御や個人情報のチェック機能・体制が整っており、安心して導入を進めることができました。

 

いかに自然な流れで「保険の必要性」に気づいてもらうか

── 「みらい」というキャラクター名の由来や、キャラクター設計などで工夫された点をお教えください。

大内田様: 「みらい」という名前は、当社の商品「みらいのカタチ」に由来しています。また、生命保険のデジタルマーケティングが今後さらに発展するように、「未来に花開いてほしい」という願いも込めています。

キャラクターのデザインは、入社3年目の女性社員が中心に行い、若年層だけではなく幅広い年代に受け入れられるように設計をしました。ただ、ペルソナを厳密に設計することはしていません。お客様にみらいちゃんとの会話体験を楽しんでもらいながら、生命保険の必要性を感じてもらうシナリオの設計はCapexさんに相談しながら決めさせていただきました。

── 生命保険の必要性を感じてもらうために、どのようなシナリオ設計にされたのでしょうか?

大内田様: 生命保険の営業では、いかに自然な流れで「保険の必要性」に気づいてもらうかが重要です。そのため、みらいちゃんとの会話の流れの中でも無理なく保険の話題に入れるよう工夫しました。

例えば、お客様と趣味の話をしている際に、「スポーツが好き」という回答をいただいたら、「スポーツをしているとケガのリスクがありますよね」といった形で話を進めます。このように押しつけがましくなく、会話の延長で自然に保険の必要性を感じてもらえるシナリオ設計を重視しました。

予想以上に多かった、「保険についてもっと知りたい」という声

── キャラクタープラットフォーム導入後、実際にどのような変化が現れましたか?

大内田様: 今までは一方通行の情報発信でしたが、キャラクタープラットフォームを導入したことで、会話を通じて少しずつ保険の理解を深めてもらえるようになったと感じています。その結果として一番分かりやすい成果はアポイントの取得率です。キャラクターとの会話をきっかけに、アポイントの取得率が一定程度向上しました。

また、意外だったのは40〜50代のお客様の利用が想定以上に多かったことです。キャラクタープラットフォームは主に若年層が利用することを想定して導入しましたが、むしろ中高年層の方が長く使ってくれたという結果が出ています。中高年層の方々にとって、キャラクターとの会話が気軽に情報を得られる手段になっていると感じました。

── 2024年12月10日から2回目のPoC(実証実験)を実施されていますが、1回目を含めてどのような形で実施されているのでしょうか?

大内田様: 1回目のPoCは営業職員を通じて、職域で疎遠になっている既存のお客様にLINEやメールでキャラクタープラットフォームを案内する形で実施しました。お伝えする範囲を限定した理由として、初めての利用なこともあり、お客様からマイナスの反響がないかをチェックするのが目的です。結果としては危惧していたクレームはなく、ポジティブな意見が多い結果になりました。そして、2回目のPoCでは告知をせず、オフィシャルホームページの商品ページにみらいちゃんを設置し、訪問者が利用できる形にしています。

──1回目のPoCと2回目のPoCで、シナリオなど変更した点はございますか?

大内田様:キャラクタープラットフォームに期待しているのは、双方向のコミュニケーションにより、保険の必要性を知ってもらうことなので、第1回目のPoCよりも保険のニーズ喚起を意識してシナリオを変更しました。しかし、突然保険の話しをしてしまうとお客様の体験が悪くなってしまうので、そこに辿り着くまでの設計も重要視して設計をしています。

これらのシナリオ変更は、キャラクタープラットフォームでお客様がどこで離脱されたのかをデータとして見える化できているからです。我々としては保険を売りたいという思いはありますが、お客様との日常会話の重要性が第1回目のPoCで分かったので、そこのバランスを意識して修正を行うことができました。

── データ分析を通じて、新たな気づきはありましたか?

大内田様:キャラクタープラットフォームをご利用いただいたお客様にアンケートをお答えいただいているのですが、「保険についてもっと知りたい」という回答が予想以上に多かったことに驚きました。通常、営業職員が説明すると「売り込まれるのでは?」と警戒される方もいらっしゃいますが、キャラクターとの会話ならそのような心理的ハードルが低くなり、気軽に質問できる環境が整っていると感じています。

自然な会話を通じてお客様との距離を近づけたり、情報提供・需要喚起を行いたいと考えている企業におすすめ

── 今後、キャラクタープラットフォームをどのように活用していきたいと考えていらっしゃいますか?

大内田様: 現状ではホームページに設置している段階ですが、より多くのお客様に利用してもらう方法を模索しています。営業職員も活用して連携を深めるのか、それともWeb上での活用を広げるのかはまだ試行錯誤中です。

将来的には、キャラクターとの対話ログを活用し、リアルな営業活動とも連携させたいと考えています。例えば、資料請求をしたお客様がキャラクターと年金の話をしていたなら、インサイドセールスがその情報を参考にしながら対応できるようにする。そうすれば、より精度の高い提案が可能になると考えています。

 

── 最後に、キャラクタープラットフォームはどのような企業におすすめでしょうか?

大内田様: 保険業界はもちろんですが、自然な会話を通じてお客様との距離感を近づけたり、情報提供や需要喚起を行いたいと考えている企業に特に向いていると思います。例えば、一方通行の情報発信では効果が出にくいと悩む企業には、顧客との関係性を築く手段として有効です。キャラクターを活用することで、お客様との関係性を築きながら、自然な形で商品やサービスの価値を伝えられる。こうしたアプローチにはまだまだ可能性があると思います。